臓器移植Q&A

腎臓腎臓

拒絶反応、感染症、合併症

拒絶反応とは何ですか?

移植した臓器は(この場合は腎臓ですが)他の人の物なので、基本的には異物として体が反応し、排除するように働きます。私たちの体は外から入ってきた異物や抗原(細菌、ウイルスなど)に対して、これを殺傷し、排除しようとする働きがあります。これは人には免疫が備わっているからで、移植臓器に対するこの排除する働きを拒絶反応といいます。

子どもは父親の半分と母親の半分のHLA(白血球の型)を受けつぐので、親子間での移植では半分のHLAは合いますが、半分は合いません。ドナーとレシピエントの血液型やHLAを出来るだけ一致させる(組織適合性)ことが長期の成績には良い影響を与えます。また、ドナーの抗原に対するレシピエントの抗体が無いことを確認(リンパ球交叉試験、クロスマッチ検査)して移植をします。

拒絶反応には急に起こるもの、時間が経って徐々に起きてくるもの、激烈に起こるもの、分からないうちに起きてくるものなど種類がありますが、放っておけば移植腎が障害を受け、ついには移植腎の機能が落ちて尿が出なくなり、再び透析をしないといけない状態に陥ってしまいます。症状がでなくても移植された腎臓のなかでは拒絶反応が起こり始めていることもあり、定期的に移植腎生検を行い、組織を調べる検査を行うこともあります。

腎移植後の合併症にはどのようなものがありますか?

移植後に起きる合併症で一番困るのは拒絶反応です。現在、急に起きてくる拒絶反応は、術前の検査や免疫抑制薬の発達でかなり抑えられるようになってきました。しかし、徐々に起きてくる拒絶反応や、抗体が関連する拒絶反応は、まだまだ十分に治療や予防ができるようには残念ながらなってはいません。

逆に免疫抑制が強すぎると本来はかからないような感染症、つまり外界から入って来た細菌やカビ、体内で静かにしていたウイルスが急に増えて症状を起こすことがあり、注意して早期に発見、診断、治療をしないと場合によっては死に至る重篤なものになることもあります。さらに免疫抑制をしていると悪性腫瘍、すなわち、がんの発症率が高くなることも分かっており、定期的にがん検診を受けることも腎移植後は大切です。

免疫抑制薬の副作用による代謝障害、すなわち、高血圧、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高くなる)、高血糖(糖尿病)、高尿酸血症(痛風)、貧血などは放っておけばそれぞれ移植腎に悪影響を及ぼし、移植腎機能低下、機能廃絶につながります。それを防ぐためにタンパク質摂取制限、塩分摂取制限、薬による治療をきちんとすることが必要です。仕事の忙しさの為についつい免疫抑制薬の服用を忘れて、気がつくと拒絶反応が起きて、移植腎機能が悪化していた、ということもないわけではありません。出来るだけ規則正しい生活を送り、定期受診を欠かさないよう様にすることも移植腎を長持ちさせるのに大切です。
移植される腎臓はほとんどが1つであり、移植時に加わった移植腎への障害、起きてしまった拒絶反応、免疫抑制薬の副作用の為の腎障害などを考えると、腎臓の大きさは十分とはいえないことが多く、その為、腎臓に負荷が多くかかり、さらに腎障害を悪くするような悪循環が始まってしまうこともあります。移植腎を大切にする心がけが大切になります。

日本では献腎ドナーが少なく、移植に至るまでの透析期間が長いことが多い為、それまでの透析で起こした合併症、特に心臓血管系、脳血管系、骨病変、悪性腫瘍などは腎移植で進行が止まることが多いのですが、決して改善するにはいたらないことがあります。きちんと十分な透析療法を受けておくことが大切です。

執筆:米田 龍生・石井 大輔

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