臓器移植Q&A

肝臓肝臓

臓器について

肝臓はどのような臓器ですか?

肝臓は、脳とともに人体最大の臓器です。すぐ上には横隔膜を介して肺と心臓があり、すぐ下には消化管が、そして背中側には腎臓が接しています。

肝臓は、全ての消化管(胃や腸など、食べ物の通り道)から血液を集める門脈、大動脈から直接くる肝動脈の2つによって栄養を送られており、すべての血液は3本の肝静脈を通って下大静脈に戻っていきます。

肝臓は門脈の血流の分布によって左と右の2つに大きく分けられ、各々がさらにいくつかの部分に分けられています。肝臓の細胞では胆汁(たんじゅう)という液体を作っていて、最初は目に見えない細かい管を流れますが、これらが合流して次第に太くなっていき、肝臓から出る時には左右の2つの大きな胆管(肝管)となります。これがさらに合流して1本の総胆管になり、十二指腸という消化管につながって、食べ物と胆汁を混ぜ合わせるのです。

肝臓は人体の代謝(いろいろな物を作ったり、壊したりすることです)の中枢です。
主に次にあげる3つの機能を営んでいます。

  • 栄養の貯蔵庫:
    食べたものは消化管でこなされ、栄養が吸収されます。肝臓はこの栄養を、門脈を通して招き入れ、その中に蓄えます。そして必要に応じてときどき血中に栄養を放出しています。たとえばブドウ糖をグリコーゲンとして蓄え、血糖値が下がればブドウ糖として血中に分泌します。タンパク質や脂肪などの他の栄養素についても同様のことを行っています。
  • 解毒・排泄:
    薬剤など、血液中をめぐっている毒物を肝臓の中で分解・解毒します。分解・解毒された毒物は、ビリルビンという茶色をした色素や、コレステロールや、胆汁酸というコレステロールなどを水に溶けやすくする物質などとともに、上述の胆汁として十二指腸に排泄されます。
  • タンパク質の合成:
    酵素や凝固因子(出血したときに血液を固まらせるもの)そしてアルブミンなど、体にとって大切なタンパク質を合成します。
肝臓が悪くなるというのは、どのような状態ですか?

肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれ、なかなか自身で症状を自覚することはありません。また、再生力が旺盛で、早い段階で障害の原因を取り除くことができれば、もとの状態に戻ることも期待できます。再生力を超える障害が生じることがさまざまな問題の原因となります。

検診などで異常を指摘された場合、まず肝臓専門医等の診察を受けて、実際どの程度肝臓が悪くなっているのかを、検査で正確に把握する事が大切です。アルコールや脂肪肝によるものは、生活習慣指導により改善する可能性がありますし、ウイルス性肝炎であれば、内科的な抗ウイルス治療法を早期に始めることにより治癒の可能性もあります。
肝臓が悪くなっているといわれる場合でも、専門医の指導の下、的確な栄養管理と肝庇護目的の投薬や輸液を行うことにより、肝臓の複雑な機能を生命の危機に至らない状態に維持し、日常生活を継続することがある程度まで可能です。

しかしながら、さらに肝臓が悪くなると(病気が進むと)、多くの場合、本来はやわらかい肝臓が硬くなっていく肝硬変といわれる状態になり、さらに肝性脳症(アンモニア等が溜まり意識が低下する状態)や食道・胃静脈瘤、そして腹水・胸水(お腹や胸に水がたまる状態)を合併する肝不全という状態を迎えます。

執筆:赤松 延久・田村 純人

この記事は役に立ちましたか?

わかりやすかった
あまりよくわからなかった
わかりにくかった