データで見る臓器移植

日本における2021年の各臓器の脳死下移植、心停止後移植ならびに生体移植数( )内は2020年の数

2021年に日本において施行された各臓器の脳死下移植、心停止後移植ならびに生体移植の数は表のとおりです。( )内は2020年の数。

日本移植学会 2021臓器移植ファクトブック、2022臓器移植ファクトブック

日本における脳死下ドナー数の推移

2009年の移植法の改正以後は増加傾向を示し、2019年では脳死ドナー数は97例と過去最多となり、それまで極めて少数であった心臓移植や肝臓移植も増加し、移植を待ち望んでいた多くの人たちに恩恵となりました。しかしながら、COVID-19の影響で、2020年は68例と大幅に減少し、2021年も64例とさらに減少しました。日本臓器移植ネットワークでの統計では、脳死ドナー数は67例となっていますが、そのうち3例は脳死判定されましたが、医学的理由で臓器提供には至っておらず、日本移植学会の報告では64例となっています。

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日本における心停止ドナー数の推移

心停止ドナー数は改正法施行の脳死法案改正後2010年より漸減傾向を示し、2014年の心停止ドナー数は最も少ない27例となっています。その後は微増していましたが2017年以降減少傾向となり、COVID-19の影響もあり2020年は9例と大きく減少しましたが2021年は12例とわずかながら増加しております。法改正により脳死ドナー数は著しく増加した反面、心停止ドナー数は減少しているのが現状です。

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日本における脳死ドナー、心停止ドナー 合計数の推移

死体臓器提供数(脳死ドナー・心停止ドナーの合計数)の推移を示します。改正法施行後の2010年では113例、2011年では112例でしたが、その後は漸減し2014年では脳死ドナー・心停止ドナーの合計数は77 例まで減少しましたが、その後は増加傾向で、2019年には125例となりました。2020年はCOVID-19の影響のため77例と大きく減少し、2021年も76例と減少しています。

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日本における18歳未満の臓器提供件数

18歳未満の臓器提供件数の推移を示します。2009年の臓器移植法改正により15歳未満からの脳死下の臓器提供が可能となり、2011年4月に初めて15歳未満の小児の脳死下臓器提供が行われました。また、2012年6月には6歳未満の小児臓器提供がありました。2019年の18歳未満の臓器提供数は心停止ドナー1例、脳死下ドナー18例となり、脳死下での提供数が著増しましたが、2020年、2021年はCOVID-19のため、各々7例、6例と減少しています。心移植をはじめとして臓器移植の必要な小児レシピエントは多数待機しており、今後の増加が期待されます。

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日本における脳死、心停止下臓器提供による臓器移植件数の推移

臓器移植の件数は、2010年7月に施行された改正臓器移植法の前後で大きく変化があります。これは、脳死での臓器提供件数が増えたことに起因します。具体的には、心停止後に提供できる臓器は、膵臓、腎臓、(眼球)に限られているのに対し、脳死下に提供できる臓器には、これらの臓器に加え、心臓、肺、肝臓、小腸が提供できるため移植件数が増加しています。一方で、臓器提供件数はあまり変わらないため、移植件数が移植希望者の登録数の増加に追い付いていないのが現状です。

(公社)日本臓器移植ネットワーク ホームページ

世界各国の臓器提供状況(2022)

死体ドナーからの提供件数は、国と地域により大きな差があります。概して欧米諸国で対人口当たりの死体ドナー件数は多い傾向があり、2022年の集計では米国が人口100万人当たり41.6件で1位、スペインが40.8件で2位でした。日本は0.62件です。

IRODaT WORLDWIDE ACTUAL DECEASED ORGAN DONORS 2022 (PMP)

日本における心臓移植件数の推移

2020年はCOVID-19感染症の影響もあって年間の国内心臓移植実施数は54件と大幅に減少しました(心肺同時移植0件)。2021年は若干持ち直して59例(同0件)、2022年はさらに回復して79例(同0件)と過去最高だった 2019年に迫る件数となりました。これにより、2022年末までの心臓移植実施件数は703例になりました(2022年8月31日までの集計グラフ)。

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小児からの脳死臓器提供件数の推移

法改正により15歳未満の方からの脳死臓器提供が可能となったので、小児(18歳未満)の方から臓器提供が行われる際のレシピエントの選択基準が定められました。臓器ごとに選定基準が異なりますが、心臓では日本臓器移植ネットワーク登録時の 年齢が 18歳未満の小児が優先されることになりました。法改正後2022年9月30日までに、18歳未満の方からの臓器提供が66件ありました。

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心移植件数と status 1 待機期間の推移

国内で心臓移植を受けた人の待機期間は、臓器移植法改正前は平均779日(29~1,362日)でしたが、法改正後、平均1,002日(134~1,711日)と著明に延長しました。2017年に移植を受けた人では平均 1,173日(213~1,711日)であり、3年を大きく超えたことになります。同様に機械的補助期間(VADの装着期間)は平均989日(21~1,802日)でしたが、2017年に移植に至った人の平均補助期間は1,211日(237~1,802日)で、66%にあたる37人は補助期間が3年を超えていました。2021年には平均1,815日となりました。米国のStatus1の患者さんの待機期間56日と機械的補助期間50日に比較して、極めて長いのが特徴です。

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心臓移植後の累積生存率

国内で2022年8月31日までに心臓移植を受けた675人(全年齢)の生存率は5年93. 3%、10年88.6%、15年79.6%です。時期などの違いはありますが、日本の心臓移植後の生存率は国際レジストリと比較しても大変良好と言えます。

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日本における肝移植数

2021年12月末までに行われた成人・小児を合わせた肝移植総数は10,839例であり、初回移植10,469例、再移植349例、再々移植20例、再々々移植1例でした。再肝移植は脳死移植で118例、生体移植で252例です。ドナー別では、死体移植718例(脳死移植715例、心停止移植3例)、生体移植が10,121例であり、年間400例程度の肝移植が日本で行われています。
尚、肝移植、腎移植においては、2021年に20歳未満のドナーからの臓器提供では20歳未満のレシピエントが優先されるようになりました。

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日本における肝移植後の患者生存率 生体肝移植 vs. 脳死肝移植

2021年12月末の集計では、国内で死体肝移植を受けた718名(内、脳死肝移植715例)の方々の累積生存率は1年89%、3年86%、5年83%、10年76%、20年58%です。
一方、生体肝移植後10,121例の累積生存率は、1年86%、3年82%、5年79%、10年74%、20年65%です。脳死移植と生体移植の差はありません(2021年12月末集計)。

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脳死肝移植における年齢別の患者生存率 小児 vs. 成人

脳死肝移植における小児と成人の肝移植成績の比較では、小児の累積生存率は、1年89%、3年88%、5年86%、10年86%であるのに対し、成人の累積生存率は、1年89%、3年86%、5年82%、10年74%であり、小児と成人の差はありません(2021年12月末集計)。

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生体肝移植における年齢別の患者生存率 小児 vs. 成人

生体肝移植における小児と成人の肝移植成績の比較で、小児の累積生存率は、1年91%、3年89%、5年88%、10年86%であるのに対し、成人の累積生存率は、1年83%、3年78%、5年74%、10年68%であり、小児肝移植の成績が有意に良好です(2021年12月末集計)。

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生体肝移植におけるABO血液型適合度別の患者生存率
血液型一致 vs. 適合 vs. 不適合

2016年にリツキシマブが保険適応となり、血液型不適合生体部分肝移植は通常診療の範疇となりました。3歳未満では血液型が一致している場合と全く同じです。年齢が大きくなるにつれて特別な拒絶反応がおきるので免疫抑制療法を工夫して行います。
成人ではかつて生存率は20%でしたが、特に2004年半ばより、リツキシマブが臨床使用され始めて以降は、血液型適合と遜色ないほどに改善しています。

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日本における腎移植数・透析患者数の推移

2021年の腎移植数は1,773例で、前年より62例増加しています。1989年より4~5年間減少傾向にあった総移植患者数は次第に増加傾向にあり、2006年には年間1,000例を超え、2019年に初めて2,000例を超えました。2021年末の透析患者数は349,700人で年々増加していますが、献腎移植登録者数は2021年末で13,738人とほぼ横ばいの状況が続いています。
尚、肝移植、腎移植においては、2021年に20歳未満のドナーからの臓器提供では20歳未満のレシピエントが優先されるようになりました。

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腎移植レシピエントの年齢(2021年症例)

腎移植レシピエントの平均年齢は、生体腎が49.2±14.8歳、献腎が51.0±15.6歳で、献腎が生体腎のレシピエント年齢を上回りました。これまでも献腎レシピエントが生体腎レシピエントに比較して高齢な傾向がありましたが、近年はほぼ同年齢となりました。生体腎移植と献腎移植をあわせると40歳代と50歳代が多くを占め、それぞれ382例、448例と約47%を占めています。10歳未満への腎移植数は生体腎移植が20例、献腎移植は5例で、合計では25例(1.4%)と非常に少ないのが現状です。

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世界の透析患者数 上位5カ国(人口100万人あたり:2020年)

人口100万人あたりの透析患者数を国別に比較すると、日本は2番目に多いという結果になっています。

UNITED STATES RENAL DATA SYSTEM 2022 ANNUAL DATA REPORT より作成

世界の年間移植件数 上位5カ国と、韓国、日本(人口100万人あたり:2020年)

日本における人口100万人あたりの腎移植件数は世界と比較しても非常に少ないという結果になっています。

UNITED STATES RENAL DATA SYSTEM 2022 ANNUAL DATA REPORT より作成

世界の年間移植件数 上位5カ国と、韓国、日本
献腎移植、生体腎移植の割合(2020年)

日本は他の国と比べると、腎移植件数に占める献腎移植の割合が非常に低くなっています。

UNITED STATES RENAL DATA SYSTEM 2022 ANNUAL DATA REPORT より作成

年代別患者生存率(生体腎・献腎)

生体腎移植、献腎移植のいずれにおいても、生存率・生着率は年代とともに改善しており、特に2001年以降は良好な成績でした。生存率に関しては、生体腎では1983~2000年で1年生存率97.1%、5年生存率が93.6%でしたが、2010~2020年では 99.2%、96.7%に上昇しています。
献腎においても同様に1983~2000年の92.6%、 86.0%から2010~2020年では97.8%、92.8%と上昇がみられています。

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年代別生着率(生体腎・献腎)

生体腎移植、献腎移植のいずれにおいても、生存率・生着率は年代とともに改善しており、特に2001年以降は良好な成績でした。生着率についてはさらに伸び幅が大きく、生体腎では1983~2000年で1年生着率93.0%、5年生着率が81.9%でしたが、2010~2020年では98.7%、93.1%に上昇しており、献腎では1983~2000年の81.6%、64.8%から2010~2020年では95.9%、87.9%へと著明に上昇していました。

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腎移植レシピエントの死亡原因

移植時期別に全レシピエント(生体腎+献腎)の死因を調査した結果、心疾患、感染症、脳血管障害、悪性新生物(がん)が上位を占めており、2001~2009年においては心疾患が、2010~2020年においては悪性新生物が死亡原因の1位となっています。

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レシピエントの移植腎廃絶原因

移植時期別に全レシピエント(生体腎+献腎)の腎廃絶に関する追跡調査の結果、いずれの時期でも慢性拒絶反応による移植腎廃絶が最多でしたが、その割合は1983~2000年で61.1%、2001~2009年で31.8%、2010~2020年24.3%で、新しい時期は観察期間が短いため低くなっています。
急性拒絶反応による廃絶に関しては、いずれの時期でも少なく、免疫抑制薬の発達と急性拒絶反応に対する治療法が確立しているためと判断されます。

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生体腎移植ドナーの予後(死亡率)

2009年から2020年までに施行された生体腎移植17,720例の生体腎ドナーの調査では、ドナー腎採取術後、3ヵ月時点において3名、1年で14名、2年で7名、3年で6名、4年で14名、5年で8名、6年で10名、7年で9名、8年で10名、9年で6名の死亡例が報告されています。

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生体腎移植ドナーの合併症(尿蛋白)

2009年から2020年までに施行された生体腎移植17,720例の生体腎ドナーの調査の結果、ドナーの術後の合併症については、尿タンパク(+)以上の症例が移植後3ヵ月で107名(0.9%)、1年の時点で109例(1.1%)に認められています。

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生体腎移植ドナーの合併症(高血圧)

2009年から2020年までに施行された生体腎移植17,720例の生体腎ドナーの調査の結果、ドナーの術後の合併症については、高血圧ありの症例が術後3ヵ月で1,554例、1年で1,413例、2年で1,045例、3年で928例報告されています。

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日本における膵移植症例数の推移

1997年10月「臓器の移植に関する法律」の施行後、2000年4月に第1例の膵腎同時移植が行われてから、2021年12月末日までに461例の脳死下での膵移植(うち391例の膵腎同時移植、51例の腎移植後膵移植および19例の膵単独移植)と3例の心停止後での膵腎同時移植が行われています。

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膵移植レシピエントの性別と年齢

膵移植レシピエントの性別は女性278例、男性183例で、女性が60%を占めました。
年齢は30歳代が115例、40歳代208例と、レシピエントの70%は30~40歳代となります。

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膵腎同時移植レシピエントの透析歴

膵腎同時移植患者の透析歴は平均7年で、ここ数年で大きな変化は見られません。腎臓単独の移植の平均待機期間の14年9カ月に比べると約半分になっています。

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膵移植後の患者生存率と移植膵生着率

移植した患者の1年、3年、5年、10年生存率はそれぞれ、95.8%、94.5%、 92.5%、86.1%です。
移植された膵臓の1年、3年、5年、10年生着率はそれぞれ86.1%、80.9%、 77.0%、69.2%です。
一方、膵腎同時移植で移植した腎臓391例の1年、3年、5年、10年生着率はそれぞれ93.2%、92.0%、89.2%、81.2%です。

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日本における肺移植症例数の推移

生体肺移植の国内での実施件数は、2021年12月末時点で、合計270件です。施設別生体肺移植実施件数の累計は、京都大学113件、岡山大学94件、東京大学21件、東北大学15件、大阪大学11件、福岡大学6件、長崎大学5件、獨協医科大学3件、千葉大学2件、藤田医科大学0件です。脳死・生体肺移植全例を合計しますと、2021年12月までにわが国では928件の肺移植を行ったことになります。なお、これに加えて3例の心肺同時移植が実施されています。

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肺移植待機患者数の推移

移植を受けた方、亡くなった方を除いて毎年12月末時点で肺移植を待機されている方の数は図のように推移しており、2021年12月末では待機数は心肺同時移植の4人を含めて477人となっています。

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肺移植後生存率

2021年12月末時点でのわが国の成績は、脳死肺移植では5年生存率73.7%、10年生存率61.4%、生体肺移植では5年生存率73.8%、10年生存率62.5%と成績に違いはありません。欧米での肺移植の成績を中心とする国際心・肺移植学会の2021年の報告で公表されている成人肺移植の5年生存率は、1996~2001年の肺移植では65.4%、2002~2007年の肺移植では69.8%、2008~2013年の肺移植では70.6%です。また、心肺同時移植の3例は2020年12月末時点で生存中です。

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日本における小腸移植実施件数

2021年12月末までの小腸移植は33名に対して37例の移植が実施されました。ドナー別では脳死小腸移植が24例、生体小腸移植が13例でした。

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小腸移植レシピエントの年齢分布

レシピエント33名の性別は男性が22名、女性が11名でした。症例数に対する年齢分布を示します。本邦での小腸移植症例は小児期の疾患に基づくものが多いのですが、19歳以上の成人症例が4割を占めます。これは依然として小児のドナーが極めて少ないことから、成人期まで待機した患者のみ移植を受けることができるのが原因と考えます。

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小腸移植の移植成績

2021年12月までの患者生存率を示します。患者の1年生存率は91%、5年生存率は73%、10年生存率は59%となっており、他の臓器移植に比べて遜色ない程度になっています。しかしながら、グラフト生着率は1年生着率、5年生着率、10年生着率がそれぞれ 86%、64%、47%と短期成績は向上したものの、長期成績はまだ十分とは言えません。

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