移植ことば辞典

さ行
再移植
ほとんどが腎移植ですが、再移植があります。2度目を2次移植、3度目を3次移植と呼びます。生体腎移植や献腎移植後に移植腎機能を失い、再び腎移植を希望される方はいらっしゃいます。ただし、再度の生体腎移植は提供していただける方がいらっしゃることが前提となります。中にはまれに2回目の献腎移植を受けられた患者さんもいますが、日本では難しいのが現状です。また、一度移植をすると抗体ができる確率が高く、2回目以降の移植はやや難しくなります。
再生医療
機能不全になった組織や臓器をもとに戻す医療を再生医療といいます。例えば、ある臓器がだめになった患者さんから特殊な幹細胞を取り出し、特殊な医療技術で増殖し、目的の臓器を再生してその患者さんへ移植する方法です。最近ではiPSを用いた再生医療の研究が進んでおり、組織再生が可能となった分野もあり、将来機能不全となった自分の組織や臓器を再生して移植できる可能性も開けてきました。
サイトメガロウイルス感染
サイトメガロウイルスによる感染症で、宿主の免疫機能低下により再活性化を起こすことで全身の臓器障害が発生します。未感染者が既感染者からの臓器を移植された場合も感染します。治療にはガンシクロビル、バルガンシクロビルが奏功しますが、遺伝子変異により抵抗性を示すこともあります。なお、モニタリングには好中球のCMVpp65抗原の染色陽性細胞数を示したアンチゲネミア法が有用です。なお、消化管や眼球感染などでは陽性にならない場合もあります。
サイトメガロウイルス(CMV)
DNAウイルスのヘルペスウイルス科に属するウイルスで、最大級のゲノムを有します。感染細胞内でフクロウの目様の特異な封入体を形成します。日本人の多くは出産~乳幼児期に多数が不顕性感染し、抗体保有率が高いです。宿主の免疫機能低下により再活性化を起こすことで、全身の臓器障害が発生します。近年抗体保有率が低下しており、未感染者が既感染者からの臓器を移植された場合に、免疫抑制下で初感染を起こし、症状が重篤となる場合があるため注意が必要です。
残腎機能
腎代替療法導入後も一部残っている腎機能を指します。透析導入後も一定期間は排尿がある患者さんが多く、残腎機能がある透析患者さんでは体液管理が比較的容易で、他にも電解質のバランスや酸塩基平衡の調整、血圧を維持するレニン分泌、エリスロポエチンの分泌、ビタミンDの活性化、β2ミクログロブリンなど中分子量の尿毒素の排泄などで有利です。腎不全の保存期と同様、透析療法が導入された後の残存腎機能の保持は患者さんの予後に影響するとの意見もあります。
自己免疫疾患
本来体内に侵入した異物を認識して排除する働きを持った免疫が、自身の正常な細胞や組織に反応してしまい、様々な症状を起こす疾患のこと。症状は全身性に起こるものや、特定の臓器に起こるものがあります。ほとんどの自己免疫疾患には抗体と呼ばれるリンパ球から産生されるタンパク分子が関与しており、代表的な疾患としては全身性エリテマトーデスや関節リウマチやなどが知られています。女性に多く、発症原因は明らかにはなっていませんが、ウイルス感染などの関与が示唆されています。
死体臓器移植
亡くなった方から臓器の提供を受けて行う移植を死体臓器移植といいます。脳死の方から提供される場合(脳死下臓器提供)と、心臓が停止した後に提供される場合(心停止下臓器提供)があります。脳死下臓器提供は心臓、肺、肝臓、膵臓、小腸の臓器が可能です。心停止下では腎臓、膵臓の臓器提供が可能です。
脂質異常症
血液中に含まれるコレステロールや中性脂肪などの脂質が一定の基準より多い状態のこと。血液中の余分な脂肪が多くなると動脈硬化を来しやすくなり心血管障害の原因となります。中性脂肪150mg/dL以上、LDL140mg/dL以上、HDL40mg/dL以下がガイドライン上の脂質異常症とされています。
自然抗体
生まれつき持っており、感染のない健康体や抗原に暴露されていない状態でも体内に存在する抗体のこと。アポトーシス細胞や修飾蛋白質など、内因的に生成される異常分子を認識し排除する作用を持つとされます。補体系やNK細胞、マクロファージ、顆粒球などの免疫をつかさどる細胞によって発動される初期の免疫システムを担っています。
糸球体
腎臓で尿を生成する基本単位はネフロンとよばれ、1つの腎臓に約100万個あるとされています。ネフロンを構成するのは原尿を生成する腎小体(糸球体およびボウマン嚢)と原尿の成分を調整する尿細管、そして血管系です。輸入細動脈が毛細血管となって糸玉状の構造をとり、輸出細動脈となって腎小体から出ていきますが、糸球体毛細血管では内皮細胞、基底膜、上皮細胞の足突起で構成されるバリアを通過したものが原尿としてボウマン腔を経て如細管へと流出し、尿細管において溶質の再吸収と分泌により組成が調整されて最終的な尿となります。正常な腎血漿流量は約500mL/minで、その20%が糸球体で濾過(糸球体濾過量GFR:100mL/min)され、その99%が再吸収され、尿として排泄されるのは1mL/min(1440mL/day)です。
糸球体腎炎
何らかの免疫学的な異常により、糸球体に免疫複合体の沈着や炎症細胞の浸潤が起こる病態です。糸球体腎炎では糸球体毛細血管のバリア機能が障害され、蛋白尿や血尿が生じます。障害が強い場合は糸球体が硬化に陥り、周囲の尿細管間質の荒廃が進んで腎機能(糸球体濾過量)の低下が起きます。糸球体腎炎は急性腎炎症候群、急速進行性腎炎症候群、慢性腎炎症候群、無症候性蛋白尿・血尿、ネフローゼ症候群など多彩な臨床症候を呈し、その詳細な診断、予後の予測、および疾患特異的な治療は腎生検による病理組織診断に基づいて行われます。
紫斑病性腎炎
紫斑(赤紫色~暗赤褐色の点状や斑状の皮下出血を呈する皮膚症状)に伴う腎炎のこと。以前はへノッホ・シェーンライン紫斑病といわれていましたが、現在はIgA血管炎と呼ばれる疾患の約50%に合併するとされています。小児(3~7歳)に好発し、下肢の紫斑、関節痛、腹痛などの症状があります。原因は上気道炎の続発することから感染症が疑われていますが明らかではありません。治療は経過観察のみや免疫抑制薬、ステロイドが使用され、予後は比較的良好で多くの場合、数週間で自然寛解しますが、10%で再発するといわれており、最近は組織学的に再発している割合が多いといわれています。
腫瘍マーカー
一般的にはがんの進行とともに増加する生体内で産生される因子のこと。血液検査で測定したり、生検や手術検体などの組織診断に腫瘍マーカーの抗体を使用したりします。多くの腫瘍マーカーは、健康な生体内にも存在するため、腫瘍マーカーのみでがんを診断できることは少ないといわれています。がんと診断された患者の腫瘍マーカーを定時的に測定することで、再発の有無や病気の進行具合を知ることができるといわれています。代表的な腫瘍マーカーとして、大腸がんのCEAや、すい臓がんのCA19-9などがあげられます。がんがあっても腫瘍マーカーが上昇しない『偽陰性』やがんがないのに腫瘍マーカーが上昇する『疑陽性』もみられます。
腎盂腎炎
腎盂、腎杯や腎実質の細菌性感染症。発症の経過の違いから急性と慢性、尿路の基礎疾患の有無により単純性と複雑性に分けられます。急性単純性腎盂腎炎は、通常下部尿路からの上行感染で、高熱、悪寒戦慄、腰背部痛がみられ、女性に生じる事が多いです。慢性複雑性腎盂腎炎は、微熱や軽度の腰背部痛が基礎疾患のある小児や高齢者に生じる事が多いです。希な疾患には、腎盂、腎実質や腎周囲にガス産生を伴う気腫性腎盂腎炎や病理学的に肉芽腫性病変を伴う黄色肉芽腫性腎盂腎炎があります。
腎機能検査
腎臓病は進行するまで自覚症状が乏しいため、血液・尿・画像などの検査を組み合わせて、腎機能や腎障害を評価します。尿蛋白検査で腎障害を発見したり、血液のクレアチニン値で腎臓病の進行度を評価したり、超音波で尿路結石を調べたりします。腎機能が悪化すると水分・電解質・老廃物・ホルモンなどのバランスが維持できなくなり、腎不全・心不全・高血圧・貧血・骨障害など全身に悪影響が及びます。クレアチニンクリアランスeGFRなどを参照。
腎硬化症
高血圧、脂質異常など動脈硬化性疾患のリスク状態が持続するために生じる腎病変であり、軽度の尿蛋白を伴い緩徐に腎機能低下が進行することが多いです。腎生検では糸球体の虚脱と硬化、尿細管萎縮/間質線維化の他、小動脈の内膜肥厚による内腔狭小化や細小動脈の壁肥厚、狭小化、硝子様物質の内皮下への沈着が見られます。腎エコー検査では表面の凹凸不整を伴う萎縮腎が特徴で、腎萎縮のため生検が施行できず、病歴や他の動脈硬化性疾患の合併などから臨床診断することも少なくありません。一般的に腎硬化症という場合、上記の病態で発症する良性腎硬化症を指すことが多いです。一方、急激な血圧上昇により腎細小動脈や糸球体の内皮障害が起こって血流が低下し、レニンの分泌が亢進して更に血圧が上昇する悪循環に陥り、急速な腎機能低下の他、眼底の乳頭浮腫や脳症など全身に臓器障害を来すのが悪性腎硬化症です。後者では適切な治療を行わなければ致命的となります。
腎障害
腎血流の低下、腎毒性薬剤、尿路閉塞などにより急激に腎機能(糸球体濾過量)が低下しますが、原因の除去により回復の可能性のある病態を急性腎障害(acute kidney injury: AKI)とよび、ネフロンの不可逆的な障害により機能ネフロンの数が減少し、回復困難かつ腎機能低下が緩徐に進行することが多い病態を慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)とよびます。それぞれの病態において、KDIGO(Kidney Disease/Improving Global Outcomes)と日本腎臓学会がガイドラインを発行しており、臨床病期と病期に応じた診断、治療の指針が示されています。
腎性貧血
腎臓は骨髄での赤血球の造血を促すエリスロポエチンと呼ばれるホルモンを産生しています。腎臓の機能が低下すると、エリスロポエチンの産生が低下して骨髄での赤血球の産生も低下し、ヘモグロビンが低下して貧血となります。血中のヘモグロビン濃度が低下すると酸素の運搬が少なくなり全身倦怠感、動悸、息切れ、めまいなどの症状がでることがあります。このような貧血には、以前は輸血で対応していましたが、現在は赤血球造血刺激製剤(ESA)とよばれる薬剤を投与することで治療が可能となっています。
振戦
ふるえは各種に分類されますが、そのうち振戦とは意図せずに起こる規則的なリズムの「細かいふるえ」のことです。ストレスや疲れによる生理的要因・甲状腺機能亢進症・アルコール・免疫抑制薬などある種の薬剤(移植で使用するカルシニューリン阻害薬で起きることがあります)・様々な神経障害などが原因です。細かい作業時や高齢者に生じるものが多いですが、パーキンソン病や脳卒中で生じる場合もあります。
腎代替療法
腎臓は、血液内の老廃物の排泄、体液量、電解質の調節など、生命の維持に非常に重要な役割を担っています。したがって、その機能がほとんど失われた場合(末期腎不全)、腎臓に代わる治療方法(腎代替療法)が必要となります。腎機能が低下してもすぐに必要ではありませんが、一般的には糸球体濾過量(GFR)が15ml/min/1.73m²以下となり、尿毒症症状がみられる場合には、腎代替療法が必要とされます。腎代替療法には血液透析、腹膜透析、腎移植の3つがあります。
心停止下腎移植
腎移植は、腎臓を提供するドナーにより大きく2つに分類されます。生体腎移植と献腎移植です。献腎移植はさらに2つに分類され、脳死に陥ったドナーから提供される脳死下腎移植と、心停止したドナーから提供される心停止下腎移植があります。本邦では、脳死ドナーからの提供が少なく、以前は献腎移植の多くは心停止下腎移植でしたが、2010年の法改正後は脳死ドナーからの腎提供の方が多くなっています。
水痘・帯状疱疹ウイルス
DNAウイルスのヘルペスウイルス科に属するウイルスで、初感染は水痘の形で発症します。治癒後は神経細胞周囲の外套細胞に潜伏します。宿主の免疫能低下により帯状疱疹を形成します。極端な免疫能低下では水痘の再燃を発症する場合もあり、ときに電撃性の経過をとる場合があります。脳炎、脊髄炎を発症すると重篤となる場合があり注意が必要です。治療には、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルが有効です。未感染者にはワクチンの投与が必要であり、生ワクチンであるため、移植予定者では移植前に行っておく必要があります。
ステロイドパルス療法
ステロイドとは副腎(腎臓の上方にある内分泌臓器)で作られる副腎皮質ホルモンのことで、薬剤として使用することにより体内の炎症を抑えたり、免疫力を抑制したりする作用があります。このステロイドを大量に短期間(3日間程度)投与することにより、炎症や免疫反応を抑えて様々な疾患の治療効果があるとされています。臓器移植後の拒絶反応に対しても使用されることが多い治療法で、短期間の使用のため副作用も少ないといわれています。
生体臓器移植
生体臓器移植は生きている方(多くは親族)から臓器の提供を受ける臓器移植です。臓器提供される親族(血族・姻族)の範囲は日本移植学会などの倫理指針により決められています。現在、日本で行われている生体臓器移植は肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸です。 その中で最も多いのが生体腎臓移植です。
生検
生検とは組織の一部を採取して顕微鏡で詳しく調べる検査です。移植後は移植臓器を生検することで拒絶反応の有無、種類、程度や免疫抑制薬の影響、感染の有無などがわかり、治療上有用な検査です。移植臓器機能の低下など、何かが起こっていることが疑われる際に診断のために行うエピソード生検と、移植後に特に変化がなくても定期的に行うプロトコール生検があります。プロトコール生検は、血液検査などに変化が出ないような早期の拒絶反応や薬剤の影響などが明らかになり、早期に対応することで移植臓器機能を保つ役割を果たします。
生存率
ある集団が一定の期間経過し、その時点で生存している人の割合を示すもの。一般的には治療効果や予後を示す客観的指標です。集団における割合であるため、その人自身の余命を直接示しているわけではなく、あくまで指標として表しています。5年生存率、10年生存率などと表し、臓器移植後の5年生存率が80%とされていた場合、移植を受けた患者さんの80%が5年後に生存していることを表しています。
生着率
生着とは、手術などによって移植した臓器が体内に定着し、正常に機能し始める状態のことをいい、生着率とは、移植してからある一定期間機能している移植臓器の割合を表します。例えば5年生着率が80%というのは、移植後5年以上移植臓器が機能している人の割合が80%であることを表しています。
生体腎移植
腎移植は、腎臓を提供するドナーにより大きく2つに分類されます。生体腎移植と献腎移植です。健常者から2つある腎臓のうち1つを採取し、慢性腎不全患者さんに移植することを生体腎移植といいます。本来、臓器提供は脳死や心停止ドナーからが望まれますが、臓器提供が少ない本邦では約90%が生体腎移植です。生体腎移植は予定手術であるため、血液型不適合移植(血液型が異なるドナーから移植を受けること)など、一部の移植では有利なこともあります。
生体腎移植ドナー
腎臓は2つあるため、腎機能が正常で、本人(ドナー)の自発的な提供意思があれば、健常人から1つの腎臓を採取し、慢性腎不全患者さんに提供、移植することができます。この腎提供者を生体腎移植ドナーといいます。倫理的にはレシピエントの親族(6親等内の血族または3親等内の姻族)であることが望まれます。その他、医学的なドナーの条件として、本邦では生体腎ドナーガイドラインが定められています。
先行的腎移植(PEKT)
腎代替療法として、血液透析、腹膜透析、腎移植の3つがあります。腎移植の多くは透析療法を経て移植が行われていましたが、末期腎不全に陥った際に、透析療法を経ずに腎移植をすることを先行的腎移植(Preemptive Kidney Transplantation:PEKT)といいます。透析療法では動脈硬化などの病変が進行するため、透析療法を経ない先行的腎移植の方が患者生存率などに優れています。そのため近年では先行的腎移植は増加傾向にあり、生体腎移植の約30%を占めるようになっています。
総コレステロール(TC)
総コレステロール(TC:Total cholesterol)は血液中のコレステロールの総量で、基準値は140~220㎎/dLです。コレステロールは全身の細胞膜の成分であり、ステロイドホルモン、ビタミンD、胆汁酸などの原料として重要な物質です。脂質であり、リポ蛋白という粒子に含まれて血液中に存在していますが、そのリポ蛋白の比重によりHDL(高密度リポ蛋白)、LDL(低密度リポ蛋白)、VLDL(超低密度リポ蛋白)などがあり、比重が大きいほど脂質の割合が低くなっています。
阻血時間
提供者体内で臓器血流が止まってから移植者体内で血流再開させるまでの、移植臓器に血液が流れていない時間を阻血時間といいます。体温のままで臓器障害が進行している温阻血時間と、臓器保存液などで冷却して臓器障害が抑えられている冷阻血時間に大別され、その合計が総阻血時間です。許容される総阻血時間の目安は、心臓4時間、肺8時間、肝臓や小腸12時間、腎臓や膵臓24時間程度です。
組織適合性検査
ドナーとレシピエントの移植組織の適合性が合うかどうかの試験。現在、移植医療で行われている組織適合性検査はABO式血液型、HLA(ヒト白血球抗原)検査、リンパ球交差試験(クロスマッチ)などです。適合度が高いほど移植の成績が良いとされていますが、免疫抑制薬の進歩により適合度が低くても移植が可能な場合もあります。
総阻血時間
臓器移植では、臓器を採取し、患者の血管と移植臓器の血管を吻合、血流が再開されるまで臓器に血流が流れません。この血流が移植臓器に流れていない時間を阻血時間といいます。通常、臓器血流が遮断されてから、冷保存液が臓器に灌流されるまでの時間を温阻血時間、冷保存液の灌流から移植臓器の血流再開までを冷阻血時間、温阻血時間と冷阻血時間の和を総阻血時間といいます。阻血の許容時間はそれぞれの移植臓器により異なりますが、一番短い心臓で4時間、長い腎臓で24時間とされます。
巣状糸球体硬化症(FSGS)
巣状糸球体硬化症(Focal glomerulosclerosis:FSGS)とは、ネフローゼ症候群を呈する腎疾患の一つで、病因は家族性、薬剤性、ウイルス性など多様です。腎生検によって診断され、正常に見える糸球体と病変のある糸球体が混在(巣状病変)し、硬化像が糸球体の一部に限局する(分節性病変)などの特徴があります。また、硬化性病変が全体に埋め尽くされていることもあります(硝子化)。末期腎不全となると腎移植の適応となりますが、移植腎に巣状糸球体硬化症が再発することがあります。