臓器移植Q&A

心肺同時移植心肺同時移植

移植について

心肺同時移植とはどのような治療ですか?

心肺同時移植とは、亡くなった他の方から心臓と両肺の提供を受け、その心臓と両肺を一塊にして自分の心臓と両肺のかわりに植え込み、心不全及び呼吸不全から脱却し、延命とQOL(生活水準)の改善を計ることを目標とする治療法です。

心肺同時移植の必要な病気にはどのようなものがありますか?

心肺同時移植でないと助からないような重症の心及び呼吸器障害に陥る病気には、後で述べますように、重症の特発性心筋症や複雑な先天性高度心奇形の患者さんで重症呼吸不全や高度肺高血圧を合併している方、逆に重症呼吸不全のある肺疾患、たとえば肺線維症や間質性肺炎で、重度心不全または難治性の不整脈を合併している方などがあります。

肺移植の成績が著しく向上しましたので、重症な肺疾患の多くは両側肺移植又は片肺移植の適応疾患となってきています。そのため、具体的な心肺同時移植の適応疾患は以下のようになると考えられています。

難治性先天性心疾患

  • アイゼンメンジャー(Eisenmenger)症候群(先天性心疾患に伴う二次性の高度肺高血圧*)

    詳細は後ほど示します。

    *:高度肺高血圧とは、薬物療法、酸素療法、一酸化窒素療法などで改善しない肺高血圧をいいます。

    ただし、心機能が保たれていて、先天性心疾患を短時間で修復できる場合には、両側肺移植又は片肺移植と先天性心疾患修復の併用手術の適応となります。しかし、心房中隔欠損や心室中隔欠損でも、重度の心不全を発症している場合は、心肺同時移植の適応となります。
    国内1番目に心肺同時移植を受けた方は、両大血管右室起始のアイゼンメンジャー(Eisenmenger)症候群でした。

  • 肺血管低形成または肺自体の低形成を伴う先天性心疾患

    基礎となる先天性心疾患は、Fallot四徴症極型、両大血管右室起始+肺動脈狭窄、単心室(Fontan前・後の両方)などがあります。
    ただしこの場合も、心機能が保たれていて、先天性心疾患を短時間で修復できる場合には、両側肺移植と先天性心疾患修復の併用手術の適応となることがあります。

  • 先天性心疾患に起因した肺動静脈瘻

    先天性心疾患の中には、肺の中で肺動脈と肺静脈が直接つながっていて高度のチアノーゼを来す動静脈瘻というものが発生します。チアノーゼが進行すると命が危ぶまれますので、心肺同時移植が行われることがあります。
    ただし、Fontan手術後などに二次的に発症する肺動静脈瘻は心臓移植のみで軽快する報告もあり、米国のコロンビア大学などでは心臓移植を行う場合があります。逆に、心疾患が修復可能な場合には、両側肺移植と心内修復の適応となる場合もあります。

  • 高度肺高血圧症を伴った心筋症

    心筋症などで心不全が進行すると肺高血圧が高度になることがあり、そのような場合に、心肺同時移植を行うことがあります。
    代表的な疾患としては、生後すぐから左心室が小さくてあまり成長しない場合や、拘束型心筋症の重症例があり、各々1名ずつ国内で心肺同時移植を受けています。

  • 肺移植の適応となる重症呼吸不全、特に慢性重症肺疾患

    上記の患者さんが重症心不全または難治性不整脈を合併した場合に、心肺同時移植を行います。
    対象となる肺疾患には下記のようなものがあります。

    • 肺線維症
    • 間質性肺炎
    • 肺血管閉塞性病変(多発性肺梗塞など)
    • 肺気腫
    • 慢性閉塞性肺疾患
    • 肺嚢胞線維症
    • 閉塞性細気管支炎
アイゼンメンジャー(Eisenmenger)症候群とはどのような病気ですか?

先天性心疾患の中には、左右の心房、左右の心室や大動脈と肺動脈に生まれつき交通{その交通を短絡(たんらく)又はシャントといいます}があるために、肺の血流が増加するため、肺動脈の圧が高くなることがあります。一般的に、手術などでその短絡を閉鎖すると、肺動脈の圧は低下することがほとんどです。しかし、短絡がある状態が長く続くと、肺動脈の壁が分厚く、硬くなって、肺動脈の抵抗が高くなり、短絡を閉じても肺動脈圧が下がらないことがあります。それが重症化すると、薬物療法、酸素療法、一酸化窒素療法などを行っても肺動脈圧が下がらなくなり、その状態をアイゼンメンジャー(Eisenmenger)症候群とよびます。

肺高血圧が進行すると、短絡を流れる血液の向きは、左心系から右心系(左右短絡)だったのが、右心系から左心系(右左短絡)になり、全身から還ってきた静脈血(酸素濃度の低い血液)が肺に行かずに、左心系、すなわち全身に流れますので、動脈血の酸素濃度が減って、全身チアノーゼになります。

チアノーゼとは、血液中の酸素の不足が原因で、皮膚が青っぽく変色することです。血液の中にある赤血球にはヘモグロビンというタンパク質があり、ヘモグロビンが酸素を運搬します。酸素のくっついたヘモグロビンが赤い色なので、酸素血を多く含む動脈血は赤くなり、酸素のくっついていないヘモグロビン(脱酸素化ヘモグロビン)は青黒いので、酸素の少ない静脈血は青黒くなります。そのため、チアノーゼの時には、皮膚、口唇や爪が青っぽく変色します。医学的には毛細血管血液中の脱酸素化ヘモグロビンの血液中濃度が5 (g/dL)以上で出現する状態をチアノーゼがあるといいます。

チアノーゼが進行すると、酸素を必要としているさまざまな臓器が傷んで、命が危なくなります。また酸素を多く運べるように、赤血球の数やヘモグロビンの量を増やすと、血液の粘り気が多くなり、血栓症を起こして、脳血管障害などの合併症を起こすことになります。

アイゼンメンジャー(Eisenmenger)症候群で高度肺高血圧になると、短絡を閉じると血液の逃げ場が無くなり、右心室の圧が上がりすぎて、右心室が耐えられなくなるので、手術で治すことができない状態です。そのため、肺移植が必要になります。

アイゼンメンジャー(Eisenmenger)症候群の原因になった先天性心疾患が、心房中隔欠損(ASD)や心室中隔欠損(VSD)のように、比較的短時間で手術できる場合には、各々の短絡を閉鎖する修復手術と両側肺移植を行います。
しかし、先天性心疾患が複雑で、その修復に時間がかかる場合には、レシピエントの心臓の虚血時間が長くなって心筋が傷んだり、移植肺の保存時間が長くなったりするため、手術の成功率が極めて低くなります。その場合には、ドナーから頂いた心臓と肺を一塊にして移植する方が手術の成功率が高くなりますので、心肺同時移植を行うことになります。しかし、心房中隔欠損や心室中隔欠損でも、重度の心不全を発症している場合は、心肺同時移植の適応となります。

拘束型心筋症とはどのような病気ですか?

拘束型心筋症は、拡張型心筋症以上に、一般の方には耳慣れない病名だと思います。心臓は、左右の心室があり、心室が収縮して中の血液を全身や肺に送り出しています。心室の収縮する力が弱くなって心室の内腔が拡大するのが、拡張型心筋症です。
一方、拘束型心筋症の場合、一般的に収縮力は低下せずに、心室の壁が硬くなって拡張できない(大きくなれない)ために、十分な血液が全身や肺から心室に還ってくることができなくなる病気です。そのため、心室の手前の心房という部屋が、大変大きくなり、肺や全身(肝臓や腎臓など)に血液が溜まってしまいます。肺に血液が溜まると、動いたときや、寝転んだときに咳や息切れがでます(この症状を喘息と間違えることも少なくありません)。また、肝臓や腎臓に血液が溜まると、腹水が溜まったり、尿量が減ったりします。頸やお腹や胸の静脈がくっきりと見えるほど拡張するのも特徴です。

胸部X線(レントゲン)検査では、心臓(特に心房)の拡大を認め、心臓超音波検査や心臓カテーテル検査では心房の拡大、心室の拡張障害(大きくなれないこと)が認められます。確定診断は、心臓の筋肉の一部を採取して、顕微鏡でみて診断します。しかし、子どもの場合は、心臓の壁が薄く、この検査をするのは危険ですので、この検査(心筋生検といいます)をせずに、拘束型心筋症と診断されることが多いです。

拘束型心筋症の多くは原因不明のため、特発性拘束型心筋症(特発性とは原因不明のこと)ともいわれます。中には遺伝疾患(アミロイド病、糖原病など)、弁膜症や先天性心疾患、肥大型心筋症、好酸球増多症、心内膜弾性線維症などが原因となっているものもあります。
治療は、まずは安静、水分制限を行い、心不全症状が強いと、利尿薬、ジギタリス製剤、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、β遮断薬などを用いて治療します。心房の拡大に伴って不整脈のみられる場合には、抗不整脈薬を用います。
拡張型心筋症の場合には、内科的治療が奏功することもありますが、拘束型心筋症の場合は、いずれの治療も対症療法(症状を抑えるだけの治療)で、病気そのものが良くなりません。つまり、根治治療は心臓移植しかありません。

成人の場合には、すでに心臓は大人のサイズにまで成長していますので、心臓が硬くなって拡張障害が来ても、症状の進行の程度は遅いのが特徴です。一方小児の場合には、心室が成長できなくなりますので、症状は急速に進行します。したがって、多少とも元気なうちに心臓移植を考慮しないと、救命の時期を逸してしまうことも少なくありません。

また、長期に肺静脈や肝静脈にうっ滞が起こると、肺や肝臓にも病変が進行して、肺高血圧、肝硬変になることが知られていま。もし肺高血圧になってしまいますと、心臓だけの移植では助けることができなくなり、心臓と肺の同時移植が必要になります。

なお、肝硬変になると、肝臓も移植しなければならなくなり、現在の日本では心肺と肝臓の3つの臓器を移植することはできませんので、救命する方法はありません。

拘束型心筋症で心肺同時を考える基準は、内科的治療を行っても、すこし動いただけで息切れなどの心不全症状がでるようになり、すでに肺うっ血のために高度肺高血圧にまで進行した場合です。

心肺同時移植を受けられない状態はありますか?

腎または肝機能障害があると、免疫抑制薬であるシクロスポリン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、エベロリムスなどの使用によって悪化することがありますので、障害が強いときにはその回復を待ってから心肺同時移植を行います。心肺同時移植を行ってもこれらの機能の回復が見込まれないときには心肺同時移植はできません。
活動性の消化性潰瘍や重症糖尿病は、移植後の免疫抑制薬として服用するステロイドの使用によって悪化することが多いので、それらが鎮静化してから心肺同時移植を行います。
エイズ、結核、ウイルス性肝炎などの感染症、悪性腫瘍(悪性腫瘍の治療を行っても5年間再発がないことを確認するまで)のある場合には心肺同時移植は行いません。

最後に、心肺同時移植は尊い提供のご意思を示された臓器提供者(ドナー)から心臓と両肺を頂く医療です。したがって、免疫抑制薬などを正しく服用し、下痢をきたすような生ものなどの摂食を避け、その上で、適切な感染予防のための自己管理を徹底し、頂いた心臓と肺を大切にできることが、心肺同時移植の必須条件となります。

日本で心肺同時移植を受けるにはどのようにしたらいいですか?

心肺同時移植を受けるには、日本臓器移植ネットワーク(JOT)に移植希望者として登録しなければなりません。
登録までの簡単な流れを示します。

  • 臓器の機能が著しく低下して移植が必要だと主治医が判断した場合に、移植施設に紹介されます。
  • まず、その移植施設で移植の適応かどうかを判断し(時には適応を決めるために追加の検査を行います)、移植の適応と判定されれば、患者さんに移植治療について十分な説明をし、理解してもらいます。
  • 患者さんが移植治療を受けることに同意された場合には、中央の適応評価委員会に審査を依頼し、その委員会で移植の適応と判定された場合に、移植治療を受けるかどうかを再度説明します(インフォームドコンセント)。
  • 移植治療に同意された場合に、JOTに移植希望者として登録されます。
  • 心肺同時移植は、心臓と肺の2種類の臓器の提供を受けるので、患者さんの登録料は心臓または肺だけの場合の2倍の6万円を振り込む必要があります。その上で、移植施設が登録申請用紙をJOTにFAXした時点で移植希望者として登録され、待機日数のカウントが始まります(どちらかが遅れた場合、遅れた方の手続きの日にちが登録日になりますのでご注意ください)。
  • 登録料、更新料は2倍になりますが、心肺同時移植希望で待機している人は、心臓か、肺のどちらか一方の1位の候補に選ばれると、もう一方の臓器の1位の候補より先に候補者として選ばれるルールになっています。

※毎年登録の更新が行なわれ、更新料は1万円(1つの臓器の2倍)です。

心肺同時移植の待機中の生活について教えてください。

脳死移植は、脳死に至った方から善意の臓器提供によって初めて成り立つ医療です。したがって、臓器の提供があるまでは、病気の治療を受けながらの待機となります。自分に適したドナーが現れるまでの期間は、同じように待っている患者さんの人数や血液型、体格によってちがいます。2010年に改正臓器移植法が施行されて脳死臓器提供件数は増加しましたが、それ以上にJOTに登録する患者さんが増加しているので、待機期間はさらに長くなっています。心臓移植では、患者さんの状態が非常に移植を急ぐ状態(緊急度1)、すなわち強心薬の持続点滴が必要か、補助人工心臓が装着されている場合は、優先的に心臓移植を受けることができます。しかし、心肺同時移植の場合は、心臓がそこまで悪くなると、肺も悪いために、移植を受けられるチャンスはほとんどなくなります。そのため、肺の候補者として1位になった時に、心肺同時移植を受けることになります。
なお、順番が回ってきても、さまざまな理由でドナーの心臓又は肺があなたに合わない場合には、次のドナーを待たなければなりません。焦らずに待たなければなりませんが、その間にいろいろ勉強して心肺同時移植について十分に理解を深めることができると思います。

実際の提供時には、ドナーの血液型、体格、待機期間に基づいて心肺同時移植の候補者が選ばれます。もしあなたが心臓移植の候補者として選ばれた場合、移植実施施設にJOTより連絡が入ります。そして、移植実施施設よりあなたが移植手術を受ける意思があるかの確認が行われます。脳死移植では一刻を争う迅速な行動が必要ですので、JOTから連絡が入ってから1時間以内にYesかNoかの返事をしなくてはなりません。したがって、状態によって入院して待機される方、自宅で待機される方、色々ケースはありますが、ご家族も含め待機中は、夜間・休日を含めて、常に連絡がとれるようにしておいてください。また、レシピエントに選択された場合、直ちに入院が出来るように必要物品をまとめておくとよいでしょう。移動のための交通機関もチェックしておいてください。

ドナーは突然現れることになります。ドナーが見つかると、急に入院または転院することになります。そうした事態にいつでも対応できるよう、普段から心の準備が大切です。多くの場合、入院するとすぐに、いくつかの検査がありますので食事をとらずに入院します。

心肺同時移植後なるべく早く活動的な生活ができるように、移植前からできる範囲で適度な運動をすることが重要になります。疲れを残したり、体がむくんだり、チアノーゼが出てくるほど運動したりすると心不全や呼吸不全が増悪しますので、かえってよくありません。運動の内容と量について、主治医に具体的に詳しく相談して指示を受けなければならないことはいうまでもありません。

心不全や呼吸不全の程度にもよりますが、可能であれば適宜歩くようにします。しかし、息切れや、胸痛、チアノーゼなどの症状がでるようならば、歩くのをやめなければなりません。ベッド上安静の方でも、定期的に座位になったり、寝ながらでも簡単な脚の運動をしたりすることが移植後役に立ちます。脚や足首をまっすぐに伸ばしたり、曲げたりする運動や、足首を回転させる運動だけでもよいです。このようなちょっとした運動でも、血行を良くし、筋力を高めます。

移植後は免疫抑制薬を飲むために、抵抗力がおちて感染症にかかり易くなります。移植後長い間、ベッドで安静にしていると、感染の危険性がさらに高まりますので、早期に離床するように移植前から心がけておくことが大切です。

ドナーの方が現れたら、どのような手順で心肺同時移植が行われるのですか?

ドナーが現れJOTよりレシピエントとして選択されると、移植実施施設に連絡が入ります。主治医との連絡でレシピエントの病状が移植手術に差し支えないかどうかが確認されます。その後、レシピエント候補の患者さん、ご家族に移植実施施設から連絡をとり、移植治療を受けるかどうかの意思確認をします。
意思確認の完了後、外来通院中の患者さんや地元で待機をされている患者さんは、迅速に移植実施施設へ移動が出来るようにします。交通手段・時間、食事や内服薬についてはレシピエント移植コーディネーターが連絡をとり説明をしますので、それに従ってください。入院中の患者さんは、主治医の指示に従って手術の準備を行います。

せっかく提供があっても、ドナーの心臓や肺の状態によっては、移植手術に使用できない場合もあります。心臓または肺が移植に適した状態であるかどうかは摘出時に判断しますが、最終的に移植実施施設に搬送された後の判定となることもあります。

心肺同時移植の手術は全身麻酔下で行われます。手術時間は8~10時間かかります。(但し、2回目の手術の場合は10時間以上かかることもあります。)
手術の傷は胸の真ん中を喉仏の少し下から、みぞおちまで縦に切ります。人工心肺という器械を装着して全身の循環を維持しながら、レシピエントの心臓と両肺をすべて取り除きます。その状態で吻合部以外の出血を止めた上で、ドナーの心臓と肺を上下大静脈又は右心房、大動脈、気管の順に吻合します。

心肺同時移植後の入院治療はどのようなものですか?

手術後はICU(集中治療室)に入ります。ICUに移って状態が落ち着けば、面会することが出来ます。この時期は感染症などに注意が必要なので、風邪を引いている方の面会はお控えください。
手術直後はたくさんのチューブやドレーン等につながれています。やがて、人工呼吸器のチューブが抜かれます。(人工呼吸器が外れた後は、大きく深呼吸をし、咳をして痰は出していきましょう。)

手術後状態が安定すれば、2日目以降には胃管が抜かれ、水分、流動食が開始になります。
寝たまま下肢を上げる、座るなどからリハビリが始まります。
腎機能の低下により人工透析を必要とする場合があります。
移植前に妊娠出産をしたり、輸血を多く受けたりすると、他人の抗原に触れた機会が多いので、移植直後に超急性拒絶反応がおこることがあります。多くは、ドナーに対する抗体をもともと持っている場合に起こります。日本ではドナーに対する抗体を持っていないかどうかをスクリーニングした上でレシピエントが選定されるので、これまでに報告例はありませんが、万が一発症すると、急激な心不全により、心臓が動かず機械的循環補助などが必要になることがあり、血漿交換や抗体を産生するBリンパ球を傷害する薬剤を投与すると治ることもありますが、重症な場合には、再移植をしなければ助からないこともあります。

手術後5~7日目に集中治療室から移植病棟の個室に移ります。直接お部屋へ入って面会頂けます。面会の際はお部屋の前の消毒液で手を消毒してマスクをして入ってください。ご家族以外の面会は禁止です。また、小さいお子さんや風邪など感染症にかかっている可能性のある方は病棟内へは入れません。(感染症を持ち込まないようにするためですのでご協力ください。)
食事もお粥から、徐々に普通食になります。生もの(果物も含む)、グレープフルーツは禁止です。
立つこと、ベッドサイドでの排泄、歩行など徐々にリハビリを行っていきます。手術後3、4日もすれば病室の中を歩行することが出来ることが多いです。

2~3週目以降には一般病棟の大部屋に移動します。
ご家族の面会の制限はありませんが、お子さんや感染症をお持ちの方は同様に面会をお控えください。ご家族以外の病室での面会は禁止です。面談室での面会を行ってください。この頃になると病棟内を歩行していただけます。病棟内のトイレを使用してください。X線(レントゲン)検査などの外出時は、マスクを着用してください。

拒絶反応で心不全などの症状がでてしまうと、すでに心筋組織がかなり障害されていますので、症状が出る前に拒絶反応の有無を調べるために、移植後早期には、頻回に心筋生検(頸や太ももからカテーテルを入れて心臓の組織を採取し、顕微鏡で見る検査)や気管支鏡による肺生検を行います。初回は手術後7日目に行います。
心筋生検を行って問題なければ、免疫抑制薬の量を減らしていきます。
その後、1カ月目までは週に1回程度の心筋生検があります。
免疫抑制薬の量が院外に出ても安全なレベルまで減量され、心機能が安定し体力が回復したら、退院となります。

執筆:福嶌 教偉・大石 久

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