臓器移植Q&A

小腸小腸

移植について

小腸移植とは、どのようなものですか?

小腸移植では、ドナーの方から小腸を提供していただく必要があります。ドナーの方の小腸を摘出して、その小腸を患者さんに移植します。
ドナーの方の小腸を摘出するときには、血流がなくなりますので、そのままでは傷んでしまいます。その傷みを最小限にくい止めるために、血管の中を特殊な保存液で満たし、冷やしておきます。この方法により、最長12時間まで保存しておくことができます。

患者さんはドナーの方の手術の進行状況に合わせて、移植手術の準備を行います。手術室に入り、麻酔をします。そして、病的な小腸は摘出されます。それらの準備が終わると、保存してある小腸が移植されます。最初にグラフト(移植する小腸)の動脈と患者さんの動脈、グラフトの静脈と患者さんの静脈を縫い合わせて血流を再開します。少しでも早く小腸の血流を再開させることが、保存による臓器の傷みを少なくするために重要です。その後、食物が通る筒の部分を縫い合わせます。どの部分に縫い合わせるかは、その患者さんの病気の状態によって変わります。

また、移植後に拒絶反応の徴候を検査する目的で、一時的に人工肛門(ストーマ)を造設します。ストーマの表面は粘膜でできており、神経がなく痛みを感じることがありません。また、括約筋もないため、便意を感じたり、便を我慢しておくことができません。移植直後は大量で水様の腸液などがストーマから流れ出ますので、うまくコントロールしながら、ストーマと付き合っていく必要があります。

小腸移植には、どのような種類がありますか?

小腸移植には、脳死になった方から小腸の提供を受ける脳死移植と、健康なご家族から小腸の一部の提供を受ける生体移植があります。

生体からの移植では、小腸のみの移植が行われることが一般的です。それに対して、海外の脳死移植では小腸だけでなく、必要に応じて他の臓器も一緒に移植されることがあります。小腸移植が必要な患者さんは小腸だけでなく、肝機能障害から肝不全などの障害を伴っていることがあるため、小腸と肝臓を同時に移植するなどの方法があります。

同時に移植される臓器によって、小腸単独移植、肝臓・小腸同時移植、多臓器移植の3種類の手術方法があります。日本では海外の脳死移植と異なり、複数同時に移植することは極めて困難な状況です。

小腸移植手術について教えてください。

手術時の創部は胸と胸の間の少し下側から、おへその下まで、お腹の真ん中を大きく切開します。移植手術は、レシピエントの小腸を取り出し、その後、グラフト(移植する小腸)とレシピエント自身との血管同士を縫い合わせます。動脈と動脈、静脈と静脈(または門脈)をつなぎ合わせます。血管吻合は難しい手技です。レシピエント自身のどこの血管をつなぐかは、グラフトの血管によって決められます。最後に、レシピエントの空腸(または十二指腸)とグラフトの小腸を縫い合わせます。グラフト小腸の下側はお腹の外に出して、人工肛門(ストーマ)とします。レシピエントの下部の腸管は、グラフト小腸に縫い合わせるより、最近は人工肛門として体外に出していることが多いです。

小腸移植の現状について教えてください。

小腸移植は、消化管という直接外界に接して消化吸収を行う臓器のため、複雑な免疫防御機能を持っており、他の臓器移植と比べ、拒絶反応のコントロールが難しく、移植後の感染性合併症も多く、難しい治療法です。しかし、近年免疫抑制療法や拒絶反応を見つける方法や移植時の医学的管理が向上し、成績も良くなってきています(2020臓器移植ファクトブック参照)。

小腸移植後に中心静脈栄養を行う必要が無くなった患者さんの中で、全ての点滴を必要としない患者さんは半数近くいます。しかし、栄養を点滴で補う必要はないものの、水分の点滴が常に必要な患者さんが半数近くいるのも事実です。

また、世界では多くの小腸移植が行われています。日本でも、2019年12月末までに32例実施されました(2020臓器移植ファクトブック参照)。

執筆:上野 豪久

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