臓器移植Q&A

肺

臓器について

肺はどのような臓器ですか?

肺は胸部にあり、空気中から酸素を体内に取り込み、二酸化炭素を空気中に排出する臓器です。肺は左右にあり、右肺は上から順に上葉・中葉・下葉からなり、左肺は上葉と下葉からなります。

重さは両肺で約1kg、横隔膜・肋間筋に囲まれた胸郭中にあり、胸腔の大部分を占めています。肺の表面を覆っている膜を胸膜といい、横隔膜や肋間筋を裏打ちしていています。また、胸壁側と肺側の胸膜の間で、胸膜で囲まれた袋状の場所を胸腔といい、少量の漿液で満たされています。左右の肺の間は縦隔とよばれ、その中には心臓、食道、気管、気管支、大動脈、大静脈、胸腺、神経などがあります。この胸水が異常に溜まった場合を「胸水」あるいは「肺に水が溜まった」といいます。

口や鼻から入る空気の通り道を気道といい、咽頭で1つになり、喉頭で食道から前方に枝分れして気管となり、縦隔で左右に枝分れして気管支になります。気管支には杯細胞や線毛細胞とよばれる細胞があり、気管支にある杯細胞は気管粘液を出して湿度を保ち、線毛細胞は線毛運動によって吸気に混入した細菌等を咽頭へ戻しています。これが痰になります。気管支は分岐し、さらに肺小葉に向けて分岐して、終末細気管支を経て呼吸細気管支になり、その先端が肺胞になります。ガス交換は約3億個(表面積は約70m2)あるといわれる肺胞で行われます。

肺の血管には血液ガス交換のためと当臓器を養うための2系統があります。
ガス交換のための血管は心臓の右心室から肺動脈が出て左右に分かれます。左右肺動脈は気道と同様に分岐して、最後は肺胞で毛細血管になります。肺胞でガス交換を終えた血管は合流して、左右それぞれ2本の肺静脈となって左心房に流れ込んでいます。そのため、肺動脈の血流は酸素分圧が低く、肺静脈は酸素分圧が高くなります。

肺の機能低下、呼吸不全とはどのような状態ですか?

肺の本来の働きである血液ガス交換機能を果たせなくなった状態が呼吸不全です。通常、動脈の血液中には100mmHg程度の酸素が含まれていて、ほとんどが赤血球中のヘモグロビンと結合して体の各組織に運ばれて酸素を供給します。血液中の酸素が減少した状態が低酸素血症です。動脈血中の酸素分圧が60mmHg以下になることを呼吸不全とよびます。また、体の組織でできた二酸化炭素は血流により肺に運ばれて呼気に排出されます。二酸化炭素が十分に体外に放出されないと、高二酸化炭素血症になります。
呼吸不全が1カ月以上続く状態は慢性呼吸不全といわれ、慢性呼吸不全を引き起こす肺の病気には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺結核後遺症、間質性肺炎、肺がんなどがあります。

肺の機能低下、呼吸不全では、どのような症状が出ますか?

肺の機能が低下すると、低酸素血症による息切れ(呼吸困難感)が主な症状として現れます。軽症の場合は、坂道や階段でのみ、息切れ(労作時呼吸困難)を起こしますが、重症になると身の回りのことをするだけで息切れを感じて、日常生活が困難になります。また高二酸化炭素血症が悪化すると、頭痛、血圧上昇や意識レベルの低下などが現れます。

慢性呼吸不全の治療にはどのようなものがありますか?

慢性呼吸不全の治療には原因となっている疾患に対する治療が必要ですが、一般的には在宅酸素療法や換気補助療法があります。
在宅酸素療法(HOT)は低酸素血症に対して、自宅で高濃度酸素を吸入する治療法で、自宅に設置した酸素供給器(酸素濃縮器や液体酸素タンク)から細長いチューブを通して酸素を吸入します。携帯用酸素ボンベを使えば外出も可能です。
二酸化炭素が増えて高二酸化炭素血症が続く場合は酸素療法のみでは不十分であり、機械の力を借りて呼吸の補助を行う必要が生じます。これが換気補助療法です。以前は気管にチューブを入れて呼吸機に繋いで行っていましたが、最近は特殊なマスクを装着して行う人工呼吸の方法も行われます。
しかし、肺の機能回復が見込めず、他に有効な治療法がなく、生命の危険が迫っている場合は肺移植が考慮されます。ただし、肺移植が行われるには一定の条件が必要です。

執筆:大石 久・岡田 克典

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