臓器移植Q&A

膵臓膵臓

移植について

膵臓移植の種類にはどのようなものがありますか?

膵臓移植の対象疾患(適応)は、糖尿病専門医の治療によってもなお、血糖コントロールが困難である1型糖尿病の患者さんです。
糖尿病性腎症のため腎不全となり、人工透析を行っているまたは近々人工透析が必要とされている患者さんには、膵臓と共に腎臓も同時に移植します。
また、膵臓移植は腎移植との関係で、以下の3通りの手術法があります。

  • 膵・腎同時移植:
    糖尿病でかつ腎症のために人工透析を受けているか、近々人工透析導入が必要な患者さんに行います。
  • 腎移植後膵臓移植:
    腎症のため、すでに腎移植を受けている糖尿病患者さんに膵臓のみを移植します。
  • 腎症のない1型糖尿病患者さんに膵臓のみを移植します。

尚、以前は生体膵臓移植を実施していた施設もありましたが、現在ではあまり行われておりません。詳細は実施施設にご相談ください。

手術までの待機期間はどのくらいですか?

脳死膵臓移植では、移植の適応判定審査を経て、日本臓器移植ネットワーク(JOT)への登録が完了した時点で待機となります。ドナー発生により緊急手術となります。2010年の臓器移植法改正により脳死ドナー数が増加したため、現在では平均2~3年で移植となるケースも増えています。血液型、HLA型により数年以上待機する場合もあります。

膵臓移植を希望する場合には具体的にどうすればよいですか?

まず、現在糖尿病を診ていただいている主治医にご相談ください。主治医から上記の移植実施施設へご紹介いただければ、詳細にご説明いたします。また、患者さんご本人からお近くの移植実施施設へお問い合わせいただいてもかまいません。

子ども(小児、幼児)も移植手術が受けられますか?

膵臓移植の適応に年齢下限は決められていませんが、多くの施設では12歳以上の小児に対する膵臓移植を原則としているようです。さらに小さいお子さんの場合には、各施設により適応が異なりますのでご相談ください。

膵臓移植手術は危険な手術ですか?

脳死膵臓移植手術は、現在、世界では40,000例以上が行われ、日本でもすでに400例以上が行われています。手術自体は標準的な方法が確立されているため、現在手術による死亡例はほとんどみられません。しかし、対象となる患者さんは1型糖尿病であり動脈硬化が著しい場合もありますので、手術が難しい場合もあります。個々の患者さんの年齢、透析期間、糖尿病合併症の状態により手術の危険性が異なりますので、詳細は実施施設にご相談ください。

移植された膵臓(および腎臓)はどのくらい機能するのですか?

移植された膵臓の生着期間は膵・腎同時移植で、3年で80%以上、5年で76%程度が生着しています。膵臓単独の移植の場合は、膵・腎同時移植に比べて若干生着率が下がります。インスリンが必要となっても、膵臓の機能が完全に無くなるわけではないので、低血糖発作などは起こらない場合が多いです。膵・腎同時移植での腎臓の5年生着は90%以上と良好です。

海外で移植を受けることは可能ですか?

膵臓移植の海外施行例はほとんどありません。受ける場合には、原則として旅費、滞在費に加え数千万円以上の医療費がかかります。さらに最近では、倫理的な問題や自国での移植促進のため、渡航移植は世界的に禁止される傾向にあり、現実的には難しいと思われます。国内での脳死膵臓移植は保険適用で実施例も増えてきていますので、国内での実施を第一に検討してください。

執筆:穴澤 貴行・伊藤 泰平

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